高校生活最後の冬休み。
年末年始は、一年のうちで皆が同じ時間に感情が高ぶる様な気がするので、地味に一番好きだ。
でも、その年の年末年始は、心が安らがなかった。
受験のためではなく、恋のために。
恋は、受験と同様に一生に一度の戦いだと思っていた。
年越しは、お母さんと横浜の船の汽笛の音を聞くカウントダウンイベントに行った。
今まで行ったカウントダウンイベントと比べると、静かな年越しだった。
でも、汽笛が鳴って年が明けた瞬間は、いつまでも鮮明に覚えている。
年越しの瞬間に、「彼と恋人同士になりたい」って、強く念じた。
周りの空気が、静かに盛り上がった。
自然と笑顔になった。
だって、今年は絶対笑うんだ。だから今、笑顔になってるんだって….
強い確信の様なものを持っていた。
初詣が終わって、元旦から、私は彼に恋心を伝えるための囁かなプレゼントを作っていた。
ハート型の小さいマスコットで、ビーズとフェルトで目とクチバシも付けて、ひよこにした。
そして、違う色のビーズを縫い付けて、「合格」という文字も作った。
恋人になる前に、まず彼に受験に合格してほしいから….手作りのお守りを作った。
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